AWS全体のネットワークセキュリティを一元管理
AWSは、組織全体のセキュリティポリシーを管理する AWS Network Security Manager の一般提供を開始しました。提供リージョンは現時点で US East(N. Virginia) です。
本サービスは、AWS WAFとAWS Shield Advancedのセキュリティ保護設定を、複数のAWSアカウントやインターネット公開リソースへ一貫して適用するための管理ソリューションです。AWS Network Firewallへの対応も今後予定されています。
今回の発表で重要なのは、個別のアカウントやリソースに分散しがちなWAFおよびDDoS対策を、組織単位で管理・自動化する選択肢が提供された点です。AWS Network Security Managerは、対象リソースへのセキュリティ保護の展開、設定ドリフトの検知、必要に応じた修正を支援します。
個別アカウント管理で起きやすい問題
AWS WAFやShield Advancedをアカウントごとに管理する方式は、環境が少ないうちは運用しやすい一方、対象が増えると次のような課題が生じます。
- アカウントや環境によって保護設定の適用状況が異なる
- WAFルールの更新タイミングに差が生じる
- 手動変更によって意図しない設定差分が発生する
- どのリソースにどのポリシーが適用されているか確認しにくい
- インターネット公開リソースの保護状況を継続的に把握する負担が大きい
AWS Network Security Managerは、こうした設定の分散を抑え、セキュリティチームがポリシーを中央で管理するための仕組みを提供します。ただし、適用対象や具体的な動作は、利用時点の公式ドキュメントで確認する必要があります。
AWS Network Security Managerでできること
元ニュースで示されている主な内容は次のとおりです。
- AWS WAFのセキュリティポリシーを組織全体で管理
- AWS Shield Advancedの保護設定を対象リソースへ適用
- Application Load BalancerやAmazon CloudFrontなど、インターネットに公開される資産へのセキュリティ保護の自動展開
- 設定ドリフトの検知
- 検知した設定ドリフトへの自動修正
- 複数アカウントにまたがるセキュリティポリシーの一元管理
ここでいう設定ドリフトとは、意図したセキュリティポリシーと実際の設定が異なる状態です。たとえば、保護設定が変更された場合や、対象リソースに想定した保護が適用されていない場合などが考えられます。
自動検知と修正を活用できれば、各アカウントを個別に確認する作業を減らし、ポリシー設計や例外管理に注力しやすくなります。一方で、自動修正の対象範囲や例外の扱いなど、具体的な挙動は公式ドキュメントで確認したうえで設計すべきです。
AWS Firewall Managerとの関係
複数アカウントにまたがるAWSのセキュリティ管理では、既存の AWS Firewall Manager との関係が導入時の検討事項になります。両サービスについて、管理対象、ポリシーの適用方法、設定ドリフトへの対応、併用や移行の可否を公式ドキュメントで確認し、自社の構成に合う管理方法を選ぶ必要があります。
AWS Network Security Managerの登場だけを理由に、既存のFirewall Managerを直ちに置き換えると判断するのは適切ではありません。少なくとも、次の点を整理してから評価するのが現実的です。
| 判断項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 管理対象サービス | AWS WAF、AWS Shield Advanced、今後対応予定のAWS Network Firewallのうち、どれを管理するか |
| 現行構成 | 既存のセキュリティ管理サービスで設定しているポリシーや例外があるか |
| 対象リソース | Application Load Balancer、Amazon CloudFrontなど、保護対象にしたいリソースは何か |
| ドリフト対応 | 検知後に自動修正する範囲や、例外をどのように扱うか |
| 適用範囲 | 対象とするアカウントやリソースをどのように定義するか |
| リージョン要件 | US East(N. Virginia)での提供が自社の運用要件を満たすか |
既存の管理方式から移行または併用する場合は、同じリソースに複数の仕組みからポリシーを適用しないよう、管理責任と設定の優先関係を事前に確認する必要があります。具体的な機能差や併用可否については、最新のAWS公式情報を参照してください。
実務上期待できる効果
1. 保護設定の適用状況を統一しやすくなる
複数アカウントや多数のインターネット公開リソースを運用している場合、個別設定だけでは保護状況に差が生じやすくなります。ポリシーを中央で管理することで、対象となるリソースに対するセキュリティ方針をそろえやすくなります。
2. ポリシー更新の運用負荷を抑えられる
WAFルールやShield Advancedの保護方針を中央で管理できれば、アカウントごとに同じ変更を繰り返す作業を減らせる可能性があります。実際の適用範囲や更新方法は、サービス仕様と自社の権限設計を確認したうえで評価する必要があります。
3. 設定差分を継続的に把握しやすくなる
設定ドリフトを検知できれば、中央で定めたポリシーと実際の設定との差分を確認しやすくなります。監査やセキュリティレビューでは、保護設定の有無だけでなく、例外の理由や適用対象も整理しておくことが重要です。
4. 手動修正の負担を抑えられる
ドリフトに対する自動修正を利用できる場合、個別アカウントでの修正作業を減らせます。ただし、意図的な一時変更やアプリケーション固有の例外まで修正される可能性があるため、自動化の範囲は慎重に決める必要があります。
導入時に確認すべき制約と注意点
利用可能リージョンが限定されている
一般提供の対象は現時点で US East(N. Virginia) に限られます。CloudFrontなどグローバルなサービスを含む構成であっても、組織のリージョン利用方針や運用手順との整合性を確認してください。
リージョンの制約は、導入可否だけでなく、管理画面へのアクセス、権限設計、運用監視、障害時の対応手順にも影響します。
対応サービスは段階的に拡大する
一般提供時点で発表されている主な対応サービスはAWS WAFとAWS Shield Advancedです。AWS Network Firewallへの対応は今後予定されていますが、現時点で利用できる機能と将来予定の機能を混同しないよう注意が必要です。
WAF、DDoS対策、ネットワークファイアウォールは役割が異なります。AWS Network Security Managerだけでネットワークセキュリティ全体を網羅できると考えず、既存のネットワーク設計やセキュリティ運用と合わせて評価すべきです。
自動修正の影響範囲を確認する
自動修正を有効にする場合は、意図した変更や例外設定が上書きされないかを確認してください。製品にどのような適用モードや例外管理機能があるかは、導入前に公式ドキュメントで確認する必要があります。
実務上は、次のような段階的な進め方が考えられます。
- 保護対象のアカウントとリソースを整理する
- 現在のWAF・Shield Advanced設定と、目指すポリシーとの差分を確認する
- 適用対象を限定して影響を確認する
- 自動修正を有効にする前に、例外や変更手順を整理する
- 適用後の設定状態と運用上の影響を継続的に確認する
これは導入手順の一例であり、具体的な操作や利用条件はAWSの最新ドキュメントに従ってください。
導入を検討する組織のチェックポイント
AWS Network Security Managerは、次のような課題を持つ組織で検討しやすいサービスです。
- AWSアカウントやインターネット公開リソースが増え、個別管理の負担が大きい
- AWS WAFやShield Advancedの保護方針を標準化したい
- セキュリティポリシーと実際の設定との差分を把握したい
- 設定ドリフトへの対応を自動化したい
- 既存のAWSセキュリティ管理サービスとの役割分担を見直したい
- US East(N. Virginia)での提供を前提に運用できる
一方、単一アカウントや少数のリソースだけを管理している場合は、中央管理への移行コストが効果を上回る可能性があります。利用料金については、AWS Network Security Managerの公式料金ページで確認してください。
まとめ
AWS Network Security Managerは、AWS WAFとAWS Shield Advancedのセキュリティポリシーを複数アカウントや対象リソースにわたって一元管理し、保護設定の自動展開、設定ドリフトの検知、修正を支援する新しい選択肢です。
複数のインターネット公開リソースを運用する組織にとっては、個別アカウントでの設定確認や手動修正を減らし、セキュリティポリシーを一貫して管理できる可能性があります。ただし、現時点の提供リージョンはUS East(N. Virginia)に限られ、AWS Network Firewallへの対応も今後予定です。
既存のAWS Firewall Managerなどを利用している場合は、単純な置き換えを前提にせず、管理対象、ポリシーの重複、例外管理、自動修正の影響範囲を公式ドキュメントで確認してください。まずは対象リソースと現在の設定を整理し、自社のリージョン要件や運用体制に適合するかを確認することが、導入判断の出発点になります。
出典: AWS What’s New
